雄性ビーグル犬3頭(平均年齢6ヶ月)に急速拡大装置を装着し、3週間にわたって計6mmの拡大を行った。拡大後の保定は4週間でその間に上顎6切歯にブラケットを接着し、アーチワイヤーとエラスティックで正中への歯の移動を行うことで新生骨への歯の移動モデルとした。装置除去8週後に屠殺し、各種組織評価を行った。なお、口蓋正中部への超音波の接触照射は1頭のみに、出力強度30mW/cm^2にて毎回20分を屠殺まで計17回行った(照射犬)。他の2頭は超音波無照射の対照犬とした。なお、上顎前臼歯に意図的再植を行い、術後22週間で組織評価した。 経時的に採得された上顎歯列模型より犬歯間距離および第三前臼歯間距離を測定した結果、照射犬は対照犬に比べ拡大後のあと戻りが少なかった。また、歯の移動は照射犬においては2週間で空隙の閉鎖がみられたが、対照犬では空隙閉鎖にそれぞれ3週間、4週間を要した。移動後の歯周組織では照射犬においてより活発で広範囲なラベリング(テトラサイクリンまたはカルセイン)像が認められた。意図的再植歯は照射犬における歯根吸収が少なく、良好な再生過程にあると考えられた。 以上のことより、超音波照射は上顎急速拡大後の新生骨形成や矯正学的歯の移動さらには再植後の歯周組織の創傷治癒に促進的に作用し、拡大後のあと戻りを阻止し、歯の移動を促進し、再植後の歯根吸収を抑制する可能性が示唆された。
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