本実験に使用したマウスは、A/J系マウスとSM/J系マウス、およびそのリコンビナント近交系マウスを20系統、各系統雄5匹、雌5匹、合計220匹用いた。マウスは環境要因による差が出ない飼育環境で固形フードにて10週飼育したのち安楽死させた。各マウスの頭部軟組織を1%KOH、42度にて溶解し頭部の骨標本を作製した。まずA/JマウスとSM/Jマウスの上下顎第一臼歯、第二臼歯を実体顕微鏡下にて、同条件で写真撮影し、写真上で最大頬舌幅径と最大近遠心幅径を計測し、量的形質とした。その結果、上顎第一臼歯の近遠心幅径、上顎第二臼歯の頬舌幅径、下顎第一臼歯の近遠心幅径、下顎第二臼歯の近遠心幅径および頬舌幅径はSM/Jマウスの方がA/Jマウスよりも有意に大きかった。このことより、SM/JマウスとA/Jマウスは、歯の大きさを決定する遺伝子のマッピングに有用であることが示唆された。また、上顎第一臼歯の頬舌幅径、上顎第二臼歯の近遠心幅径、上顎第二臼歯の頬舌幅径では両系統に有意な差は無かった。また雌雄差は認められなかった。SMXAリコンビナント近交系マウス200匹において、上下顎第一臼歯、第二臼歯の頬舌幅径と近遠心幅径は連続的な形質を示した。各系統に雌雄差はなかった。このことより、SMXAリコンビナントマウスを用いた連鎖解析により、歯の大きさを決定する遺伝子のマッピングは可能であると考えられた。またA/JマウスとSM/Jマウスの下顎骨の長さ(Go-Me間距離)を計測した結果、歯が小さかったA/Jマウスの方が下顎骨は大きく、歯の大きさとの相関はなかった。また各マウスの脾臓からDNAを抽出した。
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