研究概要 |
小児の歯科診療を進める上では,小児の行動をコントロールする必要がある。しかしその対応は歯科医師や歯科衛生士の経験的判断によるところが大きく,ひとりひとり個性の異なる小児に対してどの様に接するかの基準は無い。パーソナルスペースは自己と他者の位置関係から,その親密度を推し量ることができ,またパーソナルスペースは親密度により変動するという性格をもつ。そこで歯科臨床における小児のパーソナルスペースを明らかにすることにより,小児の歯科への適応度をスケール化し,歯科臨床において小児と対応する上での指標をみつけることが本研究の目的である。 本年度は,小児を3,4歳,5,6歳,7歳以上の3群に分け,小児が待合室から診療室へ入室する際と診療室から待合室へ退室する際に,歯科医師や保護者とどのような位置関係をとるか,またその時の歩行速度について分析し,以下の知見を得た。 入室時退室時ともに,低年齢児ほど歯科医師と一緒に歩行する傾向を認めた。その時の位置関係については,年齢に関係なく小児は歯科医師の後ろを歩行する傾向を認めた。同様に入室時退室時ともに,低年齢児ほど保護者と一緒に歩行し,かつ保護者とは並んだ位置で歩行する傾向を認めた。このことから年齢が上がるにつれて,パーソナルスペースは歯科医師に対しても保護者に対しても広がることが示唆された。また,低年齢では特に保護者とのパーソナルスペースが狭くなることが示唆された。 歩行速度に関しては,入室時では各年齢群間に違いはなく,退室時では年齢が上がるにつれて遅くなる傾向を認めた。
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