本研究は、歯根膜組織片のexplant法より得られる歯根膜細胞の細胞生物学的性質を明らかにするため、まず培養細胞と新鮮組織から抽出した骨基質タンパク質mRNA (typeIcollagen : COL1、typeXIIcollagen : COL12、bone sialoprotein : BSP、osteopontin : OPN、osteocalcin : OC、osteonectin : ON、alkaline phosphatase : ALPase、parathyroid hormone receptor : PTHr)の発現状態から骨系細胞としての性格を検索した。 培養歯根膜細胞(継代数6)を5×10^3/cm^2の細胞密度で播種し、集密期まで培養を行った。回収した培養皿および歯根膜新鮮組織よりIsogenを用いて総RNAを抽出し、reverse transcriptaseを用いたpolymerase chain reaction (RT-PCR)により各mRNAの発現を検索した。 歯根膜新鮮組織では、26cycleで8種類すべての骨基質タンパク質mRNAの発現を認めた。培養細胞ではBSP、OPN、OCN、ALP、PTHrでmRNAの発現はみられず、COL1、COL12、ONのみでmRNAの発現が認められた。COL1とCOL12では新鮮組織と比較してmRNAの発現量の上昇がみられた。 以上の結果より、歯根膜細胞は歯根膜組織中では骨系細胞としての性格を有するが、培養細胞では骨系細胞への分化抑制を示すことが分かった。今後は、初代培養細胞についても比較検討する予定である。
|