研究概要 |
本研究は,サイトカインおよびメカニカルストレス刺激ヒト線維芽細胞におけるDNA binding Protein (C/EBP)の発現とそれらが転写制御因子としてcollagenase(MMP-1)遺伝子の発現をどのように調節しているのかを明らかにすることを目的として行った. 患者の承諾を得た臨床材料を用いてヒト線維芽細胞を分離じ培養した.すなわち治療上必要と診断された矯正治療患者の抜去歯牙ならびに歯肉切除片から,Tewariらの方法に準じてヒト歯根膜ならびに歯肉線維芽細胞を分離した.得られた細胞は10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を用いて,5%CO_2,37℃で継代培養した.本年度はメカニカルストレスの条件設定を目的として,歯肉および歯根膜線維芽細胞にメカニカルストレス刺激を加えた後,経時的(0,30分,1時間,2時間,4時間,6時間,24時間後)に細胞を回収しtotal RNAを抽出した.Quantitative PCR法にてC/EBP-βmRNA量の変化について検討した.その結果,メカニカルストレス刺激後のC/EBP-βmRNAの発現に変化は認められなかった.今回加えたメカニカルストレスの細胞に与えた負荷の検討を行なう目的で,同じtotal RNAの試料を用いて炎症性サイトカインの1つであるIL-1βを選択し,そのmRNAの発現について確認したところ,collagenese(MMP-1)mRNAに比較して発現量は微量であった.したがって,今回加えたメカニカルストレスの条件は,矯正的歯の移動に用いられる加重に近いと考えられる条件であったが,細胞レベルでの炎症反応に伴うサイトカインならびにC/EBPの発現を検出するには弱い刺激であったことが確認された.
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