研究概要 |
本研究は,矯正治療時に機械的ならびに生物学的ストレスを受けると考えられる骨芽細胞における菌体表層成分に対する応答性を検討するとともに,伸展力を加えた条件下でのこれら細胞の応答性について明らかにすることを目的としている.本年度は以下の結果が得られた.1.歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisより温フェノール・水法にてリポ多糖体を抽出し,酢酸加水分解によりリピドA画分を得た.また,これら菌体より機械的に線毛を剥離し,同蛋白を調製した.2.ヒト骨芽細胞様細胞MG63およびSaos-2における菌体関連受容体であるCD14,Toll様受容体(TLR)2およびTLR4の発現についてRT-PCR,フローサイトメトリーを用いて検討した.その結果,両細胞株ともにCD14の発現がみられた.また,MG63はTLR2陽性でTLR4陰性であり,Saos-2はTLR2陰性でTLR4陽性であった.3.これら細胞株において,菌体表層成分に対する応答性について検討したところ,MG63はStaphylococus aureusペプチドグリカンおよびP.gingivalis線毛により明確なサイトカインおよび転写因子NF-κBの誘導活性を示したが,大腸菌型合成リピドAである化合物506ではこれらの活性はみられなかった.他方,Saos-2は化合物506においてこれら活性がみられた.また,供試した活性標品は,骨芽細胞様細胞からのアルカリホスファターゼ産生を増強した.次年度は,これら菌体成分刺激による骨化関連遺伝子の発現変化を調べるとともに,伸展刺激条件下での細胞応答性について明らかにすることを計画している.
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