本研究の目的は、より効率よく化学的に齲蝕部分のみを軟化させ除去できる薬剤およびシステムを開発することであった。平成13年度は以下の内容(主に新薬剤の開発)で検討を行った。 1)新薬剤の開発について (1)EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を利用した新薬剤の開発を行った。臨床上の操作性も向上させるために、粘性、着色等も検討した。 ●2液混合タイプ(EDTA溶液はアエロジルにて増粘(8wt%)させた。)は次の条件に決定した。サンプル1には次亜塩素酸ナトリウムaq.濃度1%、EDTAaq.濃度4.5%のものを、サンプル2には次亜塩素酸ナトリウムaq.濃度1%、EDTAaq.濃度0.9%とした。 ●1液タイプ(ポリアクリル酸ナトリウムにて増粘(0.2wt%)させた。)は次の2種類の条件のものに決定した。サンプル1にはEDTA aq.濃度17%、pH7.5に、サンプル2にはEDTA aq.濃度17%、pH11.0とした。 (2)ヒト抜去乳歯を用いた検討 上記の2種類のタイプを生食水に保存した抜去直後の乳歯(10歯)と10%ホルマリン固定液に保存した抜去直後の乳歯(10歯)の齲蝕除去を試みた結果、歯の保存状態には差が見られなかったことから、10%ホルマリン固定液に保存した抜去乳歯を用いて検討を行った。Carisolvと2液混合タイプおよびCarisolvと1液タイプ(2種類)を比較した場合2液混合タイプの方がCarisolvを用いて齲蝕除去を行うよりも操作時間が短い結果がでた。 以上の結果から、1液タイプよりも2液タイプのほうが臨床上の操作性を考えた上で好ましいと思われたので、今後は2液タイプの乳歯歯髄に対する影響を検討するため、動物実験を行う。また、治療時間短縮のためのシステムの開発、検討および修復物の接着性などを確認するために、齲蝕除去後の象牙質表面の走査電子顕微鏡的に考察する。
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