研究概要 |
本年度は,細菌検査に加え,細胞が傷害された際に遊出する酵素であるLactate Dehydrogenase(LDH)やAspartate aminotransferase(AST),および遊離ヘモグロビン値の唾液試料からの検出についても行った。被験者においては,プラーク指数,歯肉炎指数,プロービングデプス,臨床的アタッチメントレベル,プロービング時の出血を調べ,健常群,中等度群,重度群に分類した。これらの群間,および臨床パラメーターと,唾液から検出される細菌,および酵素との関連を調べた。 結果として,LDHに関しては,歯周病が重度になるほどその活性値が高くなり,健常群と重度群との間には統計学的有意な差が認められた。また,4mm以上の歯周ポケットの数とLDHの活性値との間に相関係数0.7で正の相関が認められた。ASTに関しては,群間で統計学的有意な差は認められなかった。ただし,プロービング時の出血の部位数とASTの活性値との間に相関係数0.43で弱い正の相関が認められた。遊離ヘモグロビン値に関しては,歯周病の重度および臨床パラメーターとの関連性は認められなかった。 歯周病のスクリーニングをすると仮定し,健常群を疾患なし,中等度群および度群をあわせて疾患ありと定義すると,LDHのカットオフポイント300U/Iで敏感度が70.0%,特異度が57.1%となり,200U/Iで敏感度は90.0%,特異度は14.3%となる。カットオフポイントの決定には,さらに被験者を増やして検討する必要性があるが,前年度施行の細菌検査とあわせて,唾液中の酵素の測定は,歯周病のスクリーニングにおいて有用であると考えられる。
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