研究概要 |
Papuamide類は1999年パプアニューギニアの海綿からBoydらにより単離構造決定された一連の化合物であり,非常に強い抗HIV活性を有することが知られている。我々はこれら化合物の相対ならびに絶対立体化学を決定し,さらに薬理サンプルに必要な物質量を提供する目的でその全合成研究に着手した。本年度までに全合成の鍵となる構成異常アミノ酸3,4-ジメチルグルタミン((3,4-DiMe)Gln),β-メトキシチロシン(β-OMe Tyr),β-ヒドロキシロイシン(β-OH Leu)の独自の合成ルートを確立することに成功し,国際学術誌に報告した。(3,4-DiMe)Glnはグルタミン酸より得られるキラル双環状ラクタムに対するジアステレオ選択的なMichael反応ならびにメチル化反応,続く速度論的なプロトン化反応を鍵段階として合成した。β-OMe TyrはGarnerアルデヒドへの4-ベンジルオキシフェニルアニオンの付加反応とK-Selectrideによる立体選択的な還元反応により,すべての立体異性体の合成をおこなった。β-OH Leuは野依らのRu-BINAPによるα-アミノ-β-ケトエステルの動的速度論的分割に基づく触媒的不斉還元反応と分子内S_N2反応を組み合わせることでβ-OH Leuの4種の光学活性体の一般的合成を提供することに成功した。 また構造上の特徴でもある環状へプタデプシペプチドの構築にも取り掛かっており,すでに環化前駆体の合成を完了しており,現在グリシン残基とアラニン残基間での閉環反応について検討を行なっている。その立体化学が未決定である側鎖Dhtdaに関してはSharplessの不斉エポキシ化反応ならびに立体選択的なアルキニル化と還元反応を用いることにより,考えられる8つの立体異性体のうち最初に4つを合成することを目的にその合成を進めている。
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