研究概要 |
医薬品など、生物活性物質の多くはその構造中に窒素原子を含む。従ってこの含窒素化合物を効率的に合成する手法の開発は、有機合成化学における大きな課題となっている。本研究は、含窒素化合物合成における触媒の開発とその応用に焦点をあてたものであり、本年度の研究によって以下のような成果を得た。 1,光学活性ジルコニウム触媒を用いる触媒的不斉合成反応 ジルコニウムアルコキシドとビナフトール誘導体から誘導されるキラルジルコニウム触媒が、イミン類の不斉アリル化反応に対し高い活性を示すことを明らかにした。この触媒を用い、光学活性多官能性ホモアリルアミン類の効率的合成を行った。また、同様の触媒は、イミン類の活性化に対し一般的に能力を発揮するばかりではなく、触媒的不斉アルドール反応などアルデヒド類の活性化に対しても有効である事を明らかにした。即ち、一連のキラルジルコニウム触媒はイミン類、カルポニル化合物の活性化に基づく様々な化合物の触媒的不斉合成法を提供するのもである。さらに、同様の触媒による触媒的不斉含窒素化合物合成反応を鍵段階とする新規生物活性化合物HPA-21の合成を行った。 2,規則性ナノ空間における有機合成反応の開発 規則的に配列した微細孔(メソポーラス孔)を有するシリカ系化合物MCM-41はそのメソ孔の形成する特異な空間内における触媒特性、触媒担体としての特性に注目が集まっている。筆者は特にMCM-41の酸特性に注目し、これを固体酸触媒として用いるFriedel-Craftsアシル化反応、Diels-Alder反応、向山アルドール反応の検討を行った。MCM-41は構成要素として含まれるシラノール基をブレンステッド酸点として酸特性を発揮するのもと考えられ、Diels-Alder反応やアセタール類を用いるアルドール型反応に対し優れた活性を示すことを明らかにした。
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