研究概要 |
最近、HIVの標的細胞への侵入機構の解明に関する研究が飛躍的に進み、特にケモカインレセプターCCR5,CXCR4がHIVの感染に必要な第二受容体であることが報告されて以来、このCCR5,CXCR4に対するHIVの結合を阻害する薬剤が有望視されている。本研究では、T細胞指向性HIV(X4-HIV-1)のコレセプターCXCR4の拮抗剤であるペプチド性化合物T22及びその低分子誘導体T140を基盤化合物とした抗エイズ治療薬の開発研究を行った。ケモカイン自体は約70残基の長鎖ペプチドであるので、T140のような低分子を基盤とするCXCR4アンタゴニストは、非常に有望であると考えられる。まず、T22およびT140の構造活性相関研究より得られた結果をもとに、T140をさらなる高活性低毒性の低分子化合物に誘導し、また、非ペプチド化を行い、生体内安定性の向上をはかった。 具体的には今年度、マウス血清、およびラット肝臓ホモジネート処理においても安定なT140誘導体を見い出した。その際、N末端をアシル化修飾することにより、この部位が新たなpharmacophoreになることがわかり、新規高活性CXCR4アンタゴニスト4F-benzoyl-TE14011を創出した。また、T140のpharmacophoreであるArg^2,Nal^3,Tyr^5,Arg^<14>を含む環状ペンタペプチドライブラリーを構築し、この中からT140に匹敵する高活性を有する化合物FC131を見い出した。本化合物は、分子量約700であり、低分子CXCR4アンタゴニストのリード化合物として有用であると思われる。また、種々のペプチド結合等価体をT140やFC131誘導体に導入して、非ペプチド化を行い、医薬品としてのprofileの向上をはかった。
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