研究概要 |
平成13年度は、研究目的・研究実施計画に基づきグリーンケミストリーを志向した超原子価ヨウ素試薬を用いる新規環境調和型反応の開発研究を行った。申請者は、まず、ごく最近、報告したリサイクル型反応剤であるポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly (diacetoxyiodo) styrene(PDAIB)を用いる水中でのアルコール類からケトン類あるいはカルボン酸類への酸化反応をジオールの系に適用し、ラクトン類が収率良く得られることを見出した。また、低温(0°C〜rt)でのESI-Mass測定により本反応の酸化反応活性種の検出に成功し、I-Br結合を含む超原子価ヨウ素種であることを確認した(Adv. Synth. Catal. 2002,in press.)。また、水中での酸化反応の他の系への適用を種々検討した結果、p-ジメトキシベンゼン類に対して、ポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly[bis(trifuoroacetoxyiodo)styrene](PBTIS)を用いることにより中性、緩和な条件下で酸化的脱メチル化反応が進行し、p-キノン類を収率良く与えることを見出した(Tetrahedron Lett. 2001,42,6899.)。また、PBTISをBF_3・Et_2O共存下で用いることによりリサイクル型試薬を用いたビアリールカップリング反応が可能になった(Tetrahedron2001,57,345.)。一方、この酸化的ビアリールカップリング反応において、より後処理も簡便でリサイクルも可能な固体酸触媒、ヘテロポリ酸がBF_3・Et_2Oに代用可能であることを明らかにし、収率良くビアリール化合物を得る新たな手法を開発した(Chem. Commun. 2002,450.)。
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