研究概要 |
アカバナ科Oenothera属植物は,oenothein AおよびBをはじめとする特異な大環状構造を有するエラジタンニンオリゴマー類を多量に含有している植物群である.これらタンニンは顕著な宿主介在性抗腫瘍効果や抗ヘルペスウイルス活性等,その生理活性の面からも注目を集めている. 今回,エラジタンニンの生合成調節機構を明らかにする目的で,Oenothera属植物の1種であるツキミソウ(O. tetraptera Cav.)の母植物のタンニンおよび関連ポリフェノール成分について検討を行った.その結果,ツキミソウの新鮮地上部より計15種の既知化合物を単離,同定し,他のOenothera属植物同様oenothein AおよびBを比較的多量生産している事を明らかにした.また,ツキミソウは,以前コマツヨイグサ培養細胞より単離されたが微量成分であり,構造未決定であったoenotherin T_1と命名したを化合物を多量生産していた.そこで,本化合物を単離,精製し,各種スペクトルデータおよび誘導体化,還元などの化学反応に基づき,分子内に新規酸化型アシル基を有する大環状エラジタンニン3量体であることを明らかにした.さらに,関連の大環状エラジタンニン3量体2種およびエラジタンニンモノマー1種を単離し,その構造を明らかにした. さらに,ツキミソウの葉から誘導を行いシュート培養系を確立した.シュートは植物ホルモンの調節により,再分化が可能であった.そこで,シュートの形態変化に伴う代謝物の変化について検討を行ったところ,その分化・生長とタンニン生産は密接な関係があることが示された.
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