研究概要 |
クラブサイタリンII(clavubicyclone)は、沖縄県石垣島近海に棲息する軟体サンゴClavularia viridisから著者らによって単離されたプロスタノイド関連化合物で、各種スペクトルデータの解析により相対立体配置を含む構造を明らかにした。新規骨格を有するこの化合物について培養ガン細胞に対する細胞増殖抑制効果を検定したところ,低濃度でその効果が認められたことにより、更なる生理活性の検定および絶対立体配置を決定する目的で、全合成研究に着手した。 交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、望む立体配置を有し、後の官能基変換に対応できるビシクロ[3, 2, 1]オクタン誘導体の効率的合成について検討を行なった。合成前駆体のビシクロ[3, 1, 0]ヘキサン誘導体の合成は、ジアゾアセト酢酸エステルおよびアルコキシジエナールのアルドール縮合とそれに引き続く三員環形成によって、達成することができた。なお,ビシクロ[3, 1, 0]ヘキサン誘導体の光学活性体の合成はキラルアルコールをエステル部分に導入し,得られるジアステレオマー混合物のクロマトグラフィーによる分離によって得ることを検討している。次に、ビシクロ[3, 1, 0]ヘキサン誘導体から3, 3-シグマトロピー転移によるビシクロ[3, 2, 1]オクタン誘導体の合成は、収率の面で満足していないが、立体選択的に望む化合物を合成することができた。得られたビシクロ[3, 2, 1]オクタン誘導体に対するα-およびω-側鎖の導入によるクラブサイクリンII(clavubicyclone)の全合成については、12位の保護基の除去法および4位のアセトキシル基の立体配置の構築等の問題が判明し、達成できていない。これらの点については検討中である。まず、全合成を達成し、絶対立体配置を確定し、生理活性の詳細について検討を加えたいと考えている。
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