研究概要 |
HIVプロテアーゼは99アミノ酸よりなるアスパルチックプロテアーゼで,ホモダイマーを形成して活性を発現する.そこで会合阻害型HIVプロテアーゼ阻害剤の活性を正確に評価するために,サブユニット間の解離が起こらない共有結合で架橋されたプロテアーゼ誘導体をケミカルリゲーション法を用いて合成することを計画した.ケミカルリゲーション法とはペプチドに含まれる官能基が多数存在する中で,化学的な選択性により特異的に結合する反応を用いて複数のペプチドを結合させる方法である.計画に従いチオールとアルキルハライドの反応によりチオエーテル結合を得る方法を用いて,HIVプロテアーゼ誘導体(モノマーユニット,10kDa)の合成を行い,次いでジスルフィド結合で架橋しダイマー誘導体(20kDa)へ変換した. 1)ペプチドセグメントの合成 自動固相ペプチド合成機を用いてC末メルカプトアミドペプチドをFmoc法による固相合成にて構築し,無水ふっ化水素酸で脱保護後,精製を行い目的ペプチドセグメントを得た.一方o-クロロトリチル樹脂担体を用いてN末ブロモアセチルペプチドの合成も行った.その結果いずれも高純度の目的物を得ることが出来た. 2)HIVプロテアーゼ誘導体(モノマーユニット,10kDa)の合成 1)で合成した二つのペプチドセグメントを6MHCl・Gn溶液中で反応しチオエーテル結合形成型のリゲーションを行った.HPLCにて確認したところ反応はスムーズに進行し,生成したHIVプロテアーゼ誘導体(モノマー)をゲル濾過クロマトグラフィーにて精製,単離した. 3)HIVプロテアゼダイマー誘導体(20kDa)の合成 2)で合成したモノマーユニットをヨウ素を用いたジスルフィド結合形成反応によりダイマー誘導体に変換した.逆相HPLCにて精製を行い,HIVプロテアーゼダイマー誘導体を得ることが出来た.
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