糖鎖固相合成を指向したリンカー、すなわちルイス酸性条件において安定であるリンカーの開発を行った。具体的にはp-alkoxy benzy1タイプのリンカーに非常に強い電子吸引性基であるニトロ基を導入し、酸に対する安定性を増した。糖供与体としてイミデート、チオグリコシド、フッ化糖を用いる典型的グリコシル化反応条件にリンカーは安定であり、ニトロ基を還元することにより、糖の水酸基保護基を損なうことなく固相から切り出すこともできる。このリンカーを用いて糖受容体、糖供与体のいずれも固相あるいは可溶性高分子担体に固定化し、糖鎖合成が可能であることを示した。このリンカーを糖タンパク質糖鎖の部分構造の合成に応用することもできた。 また、固相反応あるいは高分子担体上で反応を行う場合、反応を追跡する手法が乏しいことが問題となっているが、糖鎖合成で使われる保護基であるクロロアセチル基と選択的に反応し、呈色するP-nitrobenzyl pyridineを用いることでクロロアセチル基の脱保護反応をリアルタイムで追跡する手法を開発した。可溶性高分子上での反応については面積定量プログラムであるNIH Imageを用いて定量化することも可能であった。グリコシル化反応については高分子担体の炭素鎖長のばらつきによるマススペクトルの特徴的な形状をもとにリアルタイムで反応を追跡した。 以上の新規リンカーとリアルタイム反応追跡法を用いて可溶性高分子担体上で迅速、高収率で糖鎖を合成することに成功した。
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