研究課題
脂質モノオレインが形成する両連続キュービック相を高分子乳化剤Pluronic F127により分散した微粒子キュボソームについて分光学的研究と薬学的応用研究を行った。キュボソーム中に導入した蛍光プローブDPH-PAの時間分割蛍光異方性測定より粒子内部(キュービック相)の脂質膜の動的特性を評価した。疎水鎖の動きやすさの指標となる揺動角はMOキュービック相において約59°と、Palmitoyloleoylphosphatidylcholine(POPC)リポソーム(ラメラ相)と比べて約5°大きいことが判明した。また、POPC/MO混合系のリポソーム、キュボソームにおける揺動角の変化から、ラメラ相中のパッキングストレスの存在を確認することができた。キュボソームの血中での挙動を解明するため、in vivo、in vitroでの評価を行った。その結果、血漿中において微粒子内部のMOは血清アルブミンと結合し、速やかに微粒子外へ引き抜かれ加水分解されることが明らかとなった。このことはこの微粒子が血中において急速に崩壊することを示している。調製、保存時においては安定でありながら、血中投与後速やかに薬物が放出されるというメカニズムは、一つの投与形態として有効であると考えられるが、微粒子からの薬物のsustained releaseを想定するとこの特性は不利であり、血中での微粒子の早い崩壊挙動を改善する必要性が生じた。卵黄レシチン(EPC)、ジオレイン(DO)はともに二本のアシル鎖を有する脂質である。これらを混合するとDOの割合の増加により、ラメラ液晶相からIm3m、Pn3m、H_<II>へと相変化することがX線小角散乱により明らかになった。F127を乳化剤として高圧乳化を行うとEPC:DO=6:4および5:5において内部にH_<II>相を有する微粒子が得られた。この微粒子ではアルブミンによる脂質の引き抜きが回避されることが判明し、有効な薬物単体となる可能性が示唆された。
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