糖やアミノ酸などの栄養物質や医薬品分子などがたんばく質とどのように相互作用するかを知ることは、分子レベルでの栄養成分に関する研究や医薬品の作用に対する理解だけでなく、生体の異物認識やこれによって引き起こされるアレルギー反応のメカニズムを知る上でも極めて重要である。本研究ではこれまでに、これら分子間の相互作用を測定する最新技術装置である表面プラスモン共鳴センサーBIACORE(ビアコア)を用い、生体の相互作用モデルである糖分子を特異的に認識するレクチンたんぱく質と糖分子との相互作用を精密に測定するための反応メカニズムに対する数学的解析モデルを開発し、糖分子の作用を定量的に測定できたことを発表した(雑誌Chem. Pharm. Bull. 2002年4月)。この方法は一般性が高いものであるから、今後ビアコア装置を用いた医薬品探索研究に利用されることが期待される。また、一方で糖分子の立体構造(コンフォメーション)を特定するために、分子力場計算を用いた網羅的なコンフォメーション探索プログラムを開発し、これによる計算結果が核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定によって確かめることにも成功したので、ここで開発したプログラムを産業に提供する手立てについては四国TLO(担当:兼平氏)と相談している。これらの実験的な新規手法ならびに理論的な新規手法を用いることによって、分子の相互作用を分子レベルにおいて明らかにし、医薬品開発やアレルギー性疾病の原因の解明に役立てていく予定である。
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