研究概要 |
1)肺粘膜透過性評価系の確立 粒子の肺粘膜透過性を調べるため、Wister系雄性ラットの心肺灌流系を用いた評価系を確立した。分子量の異なる三種の水溶性モデル薬物(FITC-デキストラン,Mw.4,400,22,000,70,000)を用いた本実験系の妥当性を評価したところ、in vivo血中濃度プロファイルから求められる吸収率との間に相関性が認められた。これより、本実験系が粒子の透過性評価に妥当であることが示された。 2)微粒子の肺粘膜透過性 ラット心肺灌流系を用いた粒子の肺粘膜透過性において、種々の粒子径の負電荷を有するポリスチレンラテックス懸濁液を気管支に投与したところ、50nm以下の粒子が灌流液中に確認され、粒子が肺粘膜を透過しうることが明らかとなった。また、粒子の肺粘膜透過性は粒子径による影響が大きく、ポリスチレンラテックス粒子を用いた検討の結果、50nm以上の粒子ではほとんど透過が起こらなかった。しかしながら、ポリ乳酸グリコール酸ナノスフェアでは、同様の評価系において粒子の灌流液中への移行が認められた。このような粒子の肺粘膜透過性は粒子表面の疎水性の強さなどの特性に関係し、ポリスチレンラテックスの方がより疎水性が強く肺組織表面に付着しやすかったためと考えられる。 また、ゼータ電位が正の値を示すアミノ化したポリスチレンラテックス粒子ではほとんど膜透過が認められなかった。これは肺細胞表面に粒子が吸着し透過が生じなかったと考えられた。
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