微粒子の肺粘膜透過性を前年度に確立したラット(Wistar系、雄性、10週齢)の心肺循環系を利用した灌流系を用いて評価した。さらに、培養細胞を用いた透過機構の解明も検討した 1)PSナノスフェア(PSNS)の肺粘膜透過性に及ぼす吸収促進剤の影響 細胞間隙の開口をその作用メカニズムとする吸収促進剤(キトサン(CS)、EDTA)を微粒子と併用投与し、肺粘膜透過性を評価した。その結果、EDTA併用時には透過量が増加を示さなかったのに対し、CS併用時に透過量が噌加した。これは、PSNS粒子表面にCSが付着することによって、粒子の表面物性が変化したことに起因していると考えられた。 2)PSナノスフェアの肺粘膜透過性に及ぼすエンドサイトーシス阻害剤の影響 微粒子の細胞内ルートによる肺粘膜透過を確認するために、エンドサイトーシス阻害剤(サイトカラシンB)をPSNSと併用投与し、肺粘膜透過性を評価した。その結果、サイトカラシンB併用により有意に透過量が減少した。A549細胞取り込み実験の結果よりも同様の結果が観察された。これより、PSNSの肺粘膜透過メインルートは細胞内ルートであることが考えられた。PLGAナノスフェアを用いた透過性実験においても、PSと同様の傾向が認められた。 3)全身循環を目指した経肺投与型遺伝子封入PLGAナノスフェアの調製と粒子物性評価 pCMV-Luciferaseをモデル遺伝子として用いてw/o/wエマルション溶媒留去法によりpDNA封入PLGAナノスフェアの調製を行い、粒子径約300nmの球形粒子を得た。また、生体内分解酵素であるDNAse Iとともにナノスフェアをインキュベートし、ナノスフェアから抽出したDNAを電気泳動し、酵素分解からの保護・安定性を評価した。その結果、DNAをPLGA粒子内に封入することで保護できることが明らかとなった。
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