Multidrug resistance-associated protein(MRP)2の小腸上皮における発現変動と、その内因性基質でありアポトーシス進行への関与、或いは生体の主要な抗酸化物質としての役割を有する還元型グルタチオン(GSH)量の変動に関して検討を行った。MRP2遺伝的欠損ラットと正常ラットの小腸上皮細胞を基底部から先端部にかけて分取し、細胞内グルタチオン含量を測定したところ、基底部から頭頂部にかけての減少勾配が認められたものの、そのパターン、或いは絶対値に両ラット間で差は見られなかった。MRP2のmRNA発現量は基底部から頭頂部にかけて増加傾向が見られた。以上のことより小腸上皮細胞内GSHの分化に伴った減少にMRP2の発現量の変化が寄与している可能性は低いと考えられた。一方、in vivoで見られたMRP2の分化に伴った発現誘導はin vitro培養細胞系を用いても観察された。すなわち、小腸上皮の分化を促進する転写因子Cdx2を導入することでin vivoと同様の分化過程を辿ることが報告されている未分化小腸培養細胞IEC-6細胞において、MRP2の分化に応じた発現誘導を確認することができた。この時MRP2の発現と対応して細胞内GSHの低下傾向が見られ、GSHの細胞外への排出がMRP2の発現上昇によって亢進している可能性が示された。少なくともin vivo、in vitro両系でMRP2の分化に伴う誘導が見られたことから、MRP2の発現がどのような転写因子の元で制御されているのかに関して今後プロモーター解析を中心に進めていく予定である。
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