動脈硬化の初期病変にはコレステロールエステルを多量に蓄積した泡沫細胞が見られる。ヒトマクロファージに凝集低密度リポ蛋白質(LDL)を添加すると泡沫細胞となる。これは、パトサイトーシスといわれる新しい食作用であり、ヒトのマクロファージ特有の現象である。このメカニズムを明らかにするために、本研究を行った。 これまでの研究から、LDL中に存在するアポBがパトサイトーシスを誘発する因子の一つであることが明らかになった。そこで、凝集LDLのアクセプターの同定を試みた。LDL中のアポBにクロスリンカーを結合させ、パトサイトーシス誘導し、マクロファージの膜表面上の蛋白質と結合させた。次に、アポBとクロスリンクした蛋白質を銀染色で染色したところ、およそ250、160、130、75kDa付近にバンドが検出された。これらの蛋白質のうち、いずれがパトサイトーシスを担うのか現在までに明らかにすることは出来なかった。今後、これらの蛋白質のシーケンスを明らかにし、クローニングを行いパトサイトーシスの引き金となる蛋白質を明らかにする予定である。 マクロファージはパトサイトーシスによりsurface-connected compartment(SCC)内に凝集LDLを蓄積していく一方、プラズミンの作用によりSCC内の蓄積コレステロールを細胞外へ放出することも明らかになっている。パトサイトーシスの誘導因子を検索したところ、ホルボールエステルの添加により、細胞内のコレステロールエステル含有量は2倍から3倍に増加した。このとき、リソゾーム中でのLDLのデグラデーションも2倍に増加していた。このデグラデーションはプロテインキナーゼCにより活性化されていた。そこで、デグラデーションが増加しても細胞内のコレステロール量が増加する理由を調べたところ、パトサイトーシスが起きたときに形成されるSCC内に存在する凝集LDLのプラスミンによる細胞外への遊離が減少することが明らかとなった。
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