骨微小環境における細胞間相互作用は、骨代謝において重要な役割を担っている。現在までに多くの可溶性因子が同定されているが、細胞接着を介した破骨細胞の分化制御の機構は不明であった。最近、破骨細胞への分化・成熟に必須な破骨細胞分化因子(RANKL)が同定され、骨代謝または過度な骨吸収領域に存在する骨芽細胞や骨ストローマ細胞において高発現していることが明かとなった。血管内皮細胞も破骨細胞の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきたが、血管内皮細胞におけるRANKLの発現は検討されていなかった。そこで、我々が樹立した骨由来血管内皮細胞におけるRANKLの発現をmRNAレベル・蛋白レベルで検討した結果、TGF-βなど骨吸収を誘導する因子依存的にRANKLの発現量が増大することを見い出した。このようなRANKLの発現誘導は、p38MAPKの阻害剤であるSB203580やPKAの阻害剤であるKT5720やDominant-negative CREBの遺伝子導入によって阻害されたことから、血管内皮細胞におけるRANKLの発現にはp38MAPKとPKAのシグナル伝達系が関与していることが明かとなった。そこで現在、RANKLのプロモーター領域をLuciferase遺伝子の上流に組み込んだレポータープラスミドを用いてより詳細な検討を行なっている。以上の結果より、血管内皮細胞は以前同定した可溶性因子IL-11だけでなく、RANKLを介した破骨細胞との細胞接着によってもその分化・成熟に寄与していることが明かとなった。
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