我々はこれまでにCHO細胞を使った実験から、CLAMPが細胞内でリン酸化修飾されることを見出している。今年度はまず、ラット肝癌由来McARH7777細胞においても同様の現象が見られるかどうかを調べるために、CLAMP遺伝子を細胞にトランスフェクトし、^<32>Pで放射標識した細胞ライゼートをCLAMP抗体で免疫沈降したところ、肝細胞においてもリン酸化されることが確認され、ホスホアミノ酸分析によりセリン残基がリン酸化されることが明らかになった。また、2次元電気泳動法により、ラット肝臓内においてもCLAMPはリン酸化を受けていることが示唆された。次に、様々なCLAMPの欠損変異体及ぴアラニン置換変異体をコードする遺伝子を作製し、これらを用いてCLAMPのリン酸化されるアミノ酸の同定を行った結果、509番目と512番目のセリンがリン酸化されることが分かった。しかし、どちらか片方のセリンをアラニンに置換してしまうと全くリン酸化が起こらないことから、これら2個の近接したセリン残基が協調的にリン酸化される機構が細胞内に存在することが示唆された。次にCLAMPのリン酸化修飾の生理的意義を調べる目的で、CLAMP(Ser509Ala)或いはCLAMP(Ser512Ala)遺伝子をMcARH7777細胞にトランスフェクトして、リン酸化を受けない変異型CLAMPを恒常的に発現している細胞を作製した。これらの細胞及び正常型CLAMP安定発現McARH7777細胞を用いて、免疫沈降法によりSR-Blへの結合性を比較した結果、有意な差は認められず、CLAMPのリン酸化はSR-BIの結合性に影響を与えないことが示唆された。また、CLAMPのSR-Bl蛋白質の細胞内での発現量を高める作用についても、両細胞間で有意な差は認められず、CLAMPのリン酸化はSR-Blの安定性に影響を与えないことが示唆された。
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