本年度は、脂肪細胞の新たな機能と生活習慣病との関連性の解明に向け、1、脂肪細胞が酸化LDLのみならず、糖尿病合併症の発症・進展への関与が指摘されている糖化後期生成物(AGE)を取込み・分解すること、2、ヒト皮下脂肪細胞を用いた検討により、脂肪細胞のスカベンジャー機能が普遍的な現象であることを確認した。 1、脂肪細胞による糖化後期生成物(AGE)の取込み・分解 我々は、過剰発現細胞を用いた実験により、CD36がAGE受容体であることを明らかにしている。^<125>I-AGE-BSAを用いて3T3-L1細胞で調べた結果、脂肪細胞への分化と共にAGE-BSAの取込み・分解活性の増大を観察した。抗体阻害実験の結果、この活性はCD36を介していることがわかった。これまでAGEは、血管内皮細胞やマクロファージでの作用を中心に論じられてきたが、本結果は、AGEが脂肪細胞を介して生活習慣病の発症や進展に寄与している可能性を示唆する。 2、初代培養ヒト皮下脂肪細胞におけるスカベンジャー能の確認 ヒト皮下脂肪組織から得られた前駆脂肪細胞を分化誘導し、脂肪細胞へ分化させ、^<125>I-AGE-BSAの取込み実験を行った結果、CD36を介したスカベンジャー活性を確認した。したがって、3T3-L1細胞で見いだしたスカベンジャー機能が、脂肪細胞一般に適用できることを証明できた。 3、変性タンパク質取込みによる脂肪細胞機能の変化 脂肪細胞による酸化LDL取込みが、動脈硬化症や糖尿病発症への関与が指摘されているアディポサイトカイン量を変動させることをmRNAレベルで観察した。現在、生活習慣病との関連性をふまえ、タンパク質レベルでの確認を行っている。 今後、本研究の成果をもとに、脂肪細胞のスカベンジャー機能と生活習慣病との関連性についてin vivoレベルの解析を行う予定である。
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