中枢神経細胞は一度ダメージを受けると修復が極めて困難である。そのためアルツハイマー病やパーキンソン病のような中枢神経障害の治療についても対照療法にとどまっているのが現状である。脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor ; BDNF)やグリア細胞株由来神経栄養因子(glial-derived neurotrophic factor ; GDNF)はパーキンソン病の治療薬に用いられないか懸念されている。しかしながら、これらタンパクは、血液・脳関門を通過できず。血中での安定性にも問題があるため、これらを直接治療薬として用いることは無理である。脳に限らず生体組織が何らかの変性を受けたとき、その周囲にはT細胞やマクロファージのような免疫細胞が増殖または集結することに着目し、そのような細胞にBDNFやGDNFを強制発現させることを試みた。 初年度の今年度はGDNFの発現ベクターの作成および発現の確認のために酵素免疫測定法(enzyme immunoa ssay ; EIA)の開発に重点をおいた。GDNF遺伝子をラット海馬cDNAからクローニングし、発現ベクターであるpBlueに挿入した。次にGDNFのEIA系については、1mgのGDNFを1週間間隔で8回免疫し、抗血清を作成した。それをもとに、サンドイッチ型高感度EIA系を確立した。この系の検出感度は0.5pg/mlと非常に良好であった。発現ベクターをCOS細胞に導入して、その上清中のGDNF含量を測定したところ、3.2mg/mlのGDNFが産生されていた。次年度以降はこのベクターを免疫担当細胞に導入したいと考えている。
|