研究概要 |
今年度は、マウスを用いた抗原長期吸入による気道リモデリングモデルの特徴およびその病態形成の経時的変化について検討した。その結果、抗原濃度を0.01、0.1および1%にして3週間抗原暴露を行うと、その濃度に依存した気道炎症、気道過敏性、上皮杯細胞の過増生、基底膜下の線維化が観察された。また、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球数とBALF中のTGF-beta 1量の増加が良く相関し、上皮杯細胞の過増生あるいは基底膜下の線維化と気道過敏性との間にも有意な相関が認められた(Inflammation Research 2001)。本モデルで観察された上述のパラメーターの変動は、臨床におけるアトピー型喘息患者においても報告されていることから、今後、本モデルを用いて得られる情報は、気管支喘息の病態を理解・解明するためだけでなく、新規治療薬の検索にも寄与すると思われる。 また、本モデルを用いて経時的な変化を観察したところ、抗原暴露初期(数日後)において、上皮杯細胞の過増生、炎症性細胞の浸潤および気道過敏性が見られ、それに引き続き基底膜下の線維化が認められた。また、抗原の3週間連日暴露を休止し、その後、経時的にそれぞれのパラメーターの変動を観察したところ、休止約2週間後にはほとんど炎症性細胞の浸潤が見られなくなり、同時に上皮杯細胞の過増生も緩解した。しかし、基底膜下の線維化は、炎症性細胞の浸潤、上皮杯細胞の過増生および気道過敏性がほぼ消失した抗原暴露休止4週間後においても、引き続き同程度認められたことから、上皮杯細胞の過増生に関しては比較的速やかに誘導され、抗原回避とともに消失するが、基底膜下の線維化に関しては、遅発性に生じ、一部、不可逆性を有する病態であることが推察された(Inflammation Research, in press)。以上の成績は、気道リモデリングの病態形成機序の解明に寄与することはもとより、臨床において抗原回避は喘息症状の緩解のみならず、その難治化・重症化に関与すると思われている気道リモデリング形成の抑制においても重要な治療方針であることが示唆された。
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