補助金交付を受けた平成13年度の研究により、以下の3点に関する新たな知見を得た。 1.マウス樹状細胞(DC)株およびヒト正常DCにおけるアデノウイルス受容体の発現 RT-PCR解析により、マウスDC株およびヒト正常DCにおいてはcoxsackie-adenovirus receptor(CAR)mRNAの発現が極めて低いあるいは欠損していることが明らかとなった。一方、α_vβ_3あるいはα_vβ_5インテグリンのmRNA発現は十分に認められた。本結果は、DCのAd遺伝子導入に対する抵抗性がCARの低発現に起因すること、ならびにAdの標的指向性をα_vインテグリンに改変することでDCへの効率的な遺伝子導入が達成できることを示している。 2.RGDファイバーミュータントアデノウイルスベクター(RGD-Ad)によるマウスDC株およびヒト正常DCへの遺伝子導入・発現効率 マウスDC株およびヒト正常DCにレポーター遺伝子を搭載したRGD-Adあるいは従来型Adを感染させ、2日後に遺伝子導入・発現効率を評価した。従来型Adと比較してRGD-Adは極めて効率良くDCへの遺伝子導入・発現を達成できた。 3.RGD-Adによりニワトリ卵白アルブミン(OVA)遺伝子を導入したDC2.4細胞(マウスDC株)の免疫学的機能 RGD-AdによりOVA遺伝子を導入したDC2.4細胞では、従来型Adを適用した場合と比較して、高い抗原提示能・OVA特異的CTL誘導能あるいは抗E.G7-OVA腫瘍効果を示した。また、OVA発現RGD-Adを感染させたDC2.4細胞では、MHC分子および共刺激分子の発現増強ならびにIL-12産生増強が認められ、成熟傾向にあることが判明した。 以上の知見から、DC免疫療法におけるRGD-Adの有用性が示され、今後、RGD-Adを用いて種々の遺伝子修飾を施したDCによる新規免疫療法の開発を試みる予定である。
|