研究概要 |
代表者の所属する研究グループは,グリア細胞の機能解明を通して脳機能を追究する目的で,脳内の主要グリア細胞であるアストロサイトの病態的意義に関して一連の研究を行ってきた.その過程において,アストロサイトにおけるNa^+-Ca^<2+>交換系の存在を見いだし(Glia,1994),また,インビトロ虚血-再灌流モデルの一つであるCa^<2+>再灌流において,本交換系を介したCa^<2+>過流入より遅発性グリア細胞死が発現することを見いだした(Eur.J.Neurosci.,1996).さらに,本障害の発現に,活性酸素産生ならびにカスパーゼ3の活性化が関与するアポトーシスにより進行することを明らかとした(Eur.J.Neurosci.,1999).また本障害の制御機構については,神経成長因子が保護作用を示すこと,MAPキナーゼの活性化がその重要な下流シグナルの一つであることを見いだし,この過程において,脳機能改善薬T-588の作用発現にMAPキナーゼの活性化が,CV-2619の作用発現に神経成長因子の産生促進が密接に関与することを明らかとした(Eur.J.Pharmacol.,2000).本年度は,これらの成果を基にし,Ca^<2+>再灌流ならびに活性酸素によるグリア細胞のアポトーシスのシグナルカスケードならびに制御機構についてcGMPシグナル系を中心に生化学的手法ならびに分子生物学的手法を用いて検討した.シグナルカスケードについては,ミトコンドリアからのチトクロムc遊離がカスパーゼの活性化3のトリガーとして機能することを明らかとした.一方,制御機構については,PDE阻害薬イブジラストが保護作用を示すことを見いだし,cGMP産生とそれに引き続くGキナーゼの活性化がその重要な下流シグナルであることを明らかとした.さらに,Gキナーゼ活性化による抗アポトーシス作用がミトコンドリアのPTP制御と密接に関わることを明らかとした.現在Gキナーゼの標的となるミトコンドリア蛋白の詳細について分子生物学的手法を用いて解析している.本年度の成果については雑誌論文(Br.J.Pharmacol.,2001;J.Biol.Chem.,2001など)にて発表した.
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