Apaf-1蛋白質は、細胞自殺の機構であるアポトーシスの活性化に中心的な働きをもつ。他方Apaf-1分子と類似する複数の分子群が同定され、これらがカスパーゼやNF-kB活性化を制御することにより、細胞死や炎症応答の新たなシグナル伝達に関与することが示唆されている。しかしこれらの分子の細胞内における機能については明らかでない。我々はApaf-1および第2のApaf-1様分子として報告されたCARD4/Nod1の新たな制御因子を同定する目的で、その結合蛋白質を、酵母ツーハイブリッド法および抗体アレイ法により検索した。その結果、Nod1の新たな結合分子として癌遺伝子産物Rasの下流のエフェクター分子およびcoiled coilモチーフをもつ2つの新規の蛋白質を同定した(以下これらをNOB1-3とする)。このうちNOB1は、Nod1とC末ロイシンリッチリピートに依存してyeast内および試験管内において会合した。一方NOB1は、C末に存在するcoiled coilモチーフに依存してNod1と結合した。蛍光抗体法を用いた解析の結果、Nod1およびNOB1は共に細胞質に局在することが明らかになった。そこでNOB1のNod1に対する機能的な役割をさらに調べるため過剰発現系における解析を行った。その結果、Nod1は過剰発現によりRICK分子を介してNF-kBを活性化するが、これをNOB1は有意に増強することがわかった。すなわちNOB1はNod1に対する正の制御因子であると考えられた。Nod1は最近、バクテリアのリポ多糖や病原性赤痢菌による炎症応答に関わることが報告されている。Nod1に結合するNOB1のC末ペプチドは、このリポ多糖によるNod1を介したNF-kB活性化を阻害した。以上より、NOB1は外来因子によるNod1を介した炎症応答の制御に関わる新たな因子であるものと考えられた。
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