分裂酵母では、Rad18はもう一つのSMCタンパク質Spr18と他の数個のnon-SMCタンパク質と複合体を形成している。Rad18複合体はDNA修復に働いていると報告されている。さらにDNA複製にも働いていることが示唆されているが、細胞内でのRad18の機能や細胞周期における制御はあまり多くは知られていない。真核生物では、Rad18複合体のほかに、コンデンシン、及びコヒーシンと呼ばれるSMCタンパク質複合体が存在しており、それぞれ染色体の凝縮、姉妹染色分体どうしの対合といった過程に働いている。当研究の目的は、HeLa細胞を用いてRad18複合体の細胞内での機能や生化学的な活性を調べることであるが、まず対照としてコンデンシン複合体の解析を進めた。ヒトのコンデンシンの各サブユニットに対する抗体を作製し、HeLa細胞を用いた同調実験によりコンデンシンの細胞周期における挙動を観察した。^<32>P正リン酸を用いたパルスチェイスの実験により、HeLa細胞ではコンデンシンのSMCサブユニットの一つと三つのnon-SMCサプユニットがM期特異的にリン酸化され、M期からG1期に進行する際に著しく脱リン酸化された。分裂間期には顕著なリン酸化は観察されなかった。一方、コンデンシンのタンパク量は細胞周期を通じてあまり大きな変動を示さなかった。また、ツメガエルのM期卵抽出液から精製したコンデンシンはATPとトポイソメラーゼl存在下で弛緩した環状DNAに正のスーパーコイルを導入する活性を持つが、HeLa細胞のコンデンシンもM期特異的にスーパーコイリング活性を示した。これらの結果から、HeLa細胞においてコンデンシンの機能が量ではなくリン酸化により制御されていることが示唆された。現在、Rad18複合体に対しては、ヒトのRad18、及びSpr18のペプチド抗体を作成中で、抗体価が上がりつつある。
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