これまでに、末梢神経に特異的に発現すると考えらて来たP_oがラット脊髄に発現し、老化に伴ってその糖鎖構造が変化することを明らかにして来た。本年度は、実際にP_oの糖鎖構造変化を明らかにすることを目的として、2次元電気泳動によるサンプルの分離と蛍光プローブを用いた定量的なウエスタンブロッティングの解析システムを構築した。 本年度はこの解析を糖鎖構造特異的レクチンを組み合わせて、老化に伴う脊髄可溶性糖蛋白質の変化の解析を行った。若齢ラット(9週齢)と老齢ラット(30月齢)脊髄から調製した可溶性蛋白質を2次元電気泳動で分離し、PVDF膜に転写後concanavalin A(ConA)を反応させたところ、老齢ラット脊髄にConAの反応性が顕著に上昇するスポットを見い出した。同様の反応性が大脳皮質可溶性画分にも見られ、これらの反応性は高マンノース型糖鎖を糖蛋白質から遊離するEndoglycosidase HをPVDF膜に転写後に反応させることによって失われることから、高マンノース型糖鎖を持つ糖蛋白質が可溶性画分に増加することが明らかになった。今後MALDI-TOF/MSを用いてPeptide mass Finger Printingにより同定する予定である。 今年度構築した2次元電気泳動分離サンプルのブロッティングシステムとこれまでに作成した特異的抗P_o抗体を用いることによって、発現量の少ない脊髄中のP_o分子を効率良く単離し、検出できるであろう。更に単離したP_oから糖鎖を遊離し、これまでに我々が開発した蛍光標識を用いた糖鎖解析システムを用いることによって、その構造が明らかにされると考えられる。将来的にこれらの解析結果から、老化に伴って糖鎖の生合成に関わるどのような因子が変化しているのか明らかになると期待される。
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