甘草の成分であるグリチルリチン(GL)は、抗ウィルス作用や抗アレルギー作用を有することが知られている。一方、Fasを介するアポトーシスのシグナル伝達系は、自己反応性リンパ球の除去等に関与することが報告されている。これまでに研究代表者らは、GLが単独ではアポトーシスを誘導することなく、Fasを介したアポトーシスを増強することを見出しており、今回その奏功機構について検討した。 GLのリジン結合体より、GLのFITC蛍光標識体(GL-Lys-F1)を調製した。GL-Lys-FlもGLと同様に、Fas介在アポトーシスを増強した。ヒト白血病細胞株Jurkat及びMolt-4FをGL-Lys-Flとインキュベートし、フローサイトメトリーにより解析した結果、GL-Lys-Flは細胞と弱く結合するものの、界面活性剤を含まない緩衝液による洗浄で容易に解離することが明らかになった。GLは細胞膜と弱く結合することにより、アポトーシス増強をすることが示唆された。 次に、GLの構造体類似体によるアポトーシス増強作用を検討した。GLのアグリコンであるグリチルレチン酸は増強活性を示さなかったが、GLのモノグルクロナイドはGLより弱い増強活性を示した。しかし、グルクロン酸にはこのような活性は認められなかった。GLによるアポトーシス増強には、アグリコン部分とグルクロン酸の両方が必要であることが明らかになった。 つづいて、GLによるアポトーシス関連タンパク質の量的変化を検討した。GLはFas、Fas ligand、FADDなどのタンパク質の発現量に影響を与えなかった。これらのことから、GLによるアポトーシス増強には、タンパク質の量的変動以外の要因が大きく関与していることが考えられた。
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