[研究の目的]光化学的パニング法は、我々が独自に提唱する、低分子リガンドの受容体タンパク質クローニングのための画期的な方法論である。光反応基ジアジリンから生じる高反応種カルベンが相手分子と共有結合するという性質を利用した本方法は、(1)従来のパニング法に比べて高速で簡便な解析が可能、(2)固相上のパニング素子で様々なリガンドの同時解析が可能、(3)光反応基「ジアジリン」の特性による選択性の向上、などの特徴を持つ。本研究は、この光化学的パニング法を確立し、その有用性を実証することが目的である。 [研究の成果]本研究テーマの潜在能力を発揮させるため、今年度は光化学的パニング法の土台となる、パニング素子の開発に注力した。大腸菌膜結合型の発現系の開発は次年度の課題とした。 1.3種類の固相集積型・パニング素子プラットフォームを設計、それら合成法を確立した。 2.糖鎖・およびペプチドをリガンドとする、固相集積型パニング素子の開発に成功した。 3.DNAの特定部位にジアジリン型・光アフィニティー・プローブを搭載する方法を確立した。 4.特定のタンパク質を発現したファージが、糖鎖およびペプチドをリガンドとする固相集積型パニング素子で、効率的に選択・捕獲されることを確認した。 [まとめ]ジアジリン型・光アフィニティー・ラベルを搭載できるリガンドが、糖鎖、ペプチド、DNAへと拡がり、本研究の潜在能力を、幅広い分野の研究領域に拡大できた。バクテリオファージタンパク質発現系を利用した、光化学的パニング法の基礎的検討結果を踏まえ、次年度の開発予定の大腸菌膜結合型の発現系とあわせ、低分子リガンドの受容体タンパク質クローニング法の強力なツールとしていきたい。
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