研究概要 |
アシジアサイクラマイド(ASC)は、分子内にチアゾール環(Thz)、オキサゾリン環(Oxz)を含み、ペプチド環の中心に分子内二回回転対称を有するcyclo(-L-Ile-Oxz-D-Val-Thz-)_2という配列をもつ。そして強い抗腫瘍活性を示すことが知られている。 平成13年度はASC分子内の一方のIle残基をAla(AASC), Aib(AibASC), Val(VASC), Phe(PASC)に置換した非対称な誘導体を合成し、これらについてX線構造解析を行った。以前、申請者はASC,LASC(同様にLeuに置換)、GASC(同様にGlyに置換)について立体構造解析を行い、ASC、LASCは分子が開いた"square form"、GASCは分子が折れたたまれた"folded form"であることを明らかにしている。本研究におけるX線構造解析の結果はAASC、AibASC、PASCが"folded form"、VASCが"square form"であった。以上の結果は非対称性の程度によってコンフォメーションがコントロールされることを示唆している。 またオキサゾリン環が開裂したdesoxazolineASC(DOASC)及びその誘導体についても同様にX線構造解析を行った。しかしDOASC誘導体は非対称の程度にかかわらず、すべての誘導体が"folded form"であった。つまりASCのコンフォメーションコントロールにおけるOxz環の重要性が示唆された。 一方、P388マウスリンパ性白血病細胞を用いた細胞毒性試験を行ったところ"folded form"よりも"square form"のほうが活性が強い傾向がみられた。しかしPASCは"folded form"であるが、天然型ASCと同等の活性を示した。よって活性の増大はコンフォメーションとの相関だけでなく、Phe残基の芳香環と作用部位との相互作用にも依存している可能性が考えられる。このことはASCの類縁体であるパテラマイドB,Cが芳香環をもたないパテラマイドAよりも活性が強いことからも示唆される。
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