1.パーオキシナイトライト処理による細胞内カスパーゼ経路活性化能の検討 前年度にin vitroにおけるカズパーゼ-3の活性化について免疫ブロッティング法を用いて解析し、パーオキシナイトライト処理シトクロムcではカスパーゼ-3活性化能が低下していることを見いだした。本年度は神経膠芽腫培養細胞にパーオキシナイトライトを作用させた場合のカスパーゼ-3および上流経路の活性化の有無を免疫ブロッティング法、蛍光性擬似基質の切断活性により検討した。細胞生存率はパーオキシナイトライト濃度依存的に減少したにも関わらず、持続的なパーオキシナイトライト処理によりカズパーゼ-3および-9活性化が抑制されることが示された。また、短時間のパーオキシナイトライト処理ではアポトーシスが進行することが示された。これによりin vitro系に対応する現象が培養細胞系でも観察されたことになる。 2.パーオキシナイトライト処理による培養細胞内シトクロムcの修飾反応の解析 前年度の検討において、パーオキシナイトライト処理によってラット神経膠芽腫培養細胞内の12〓14kDa付近の蛋白質がニトロ化されることが明らかとなった。培養細胞のパーオキシナイトライト処理によって実際に細胞内のシトクロムcがニトロ化されるか否かを免疫沈降法を用いて検討したところ、パーオキシナイトライト処理により細胞内でシトクロムcがニトロ化されることが示された。さらにin vitro系でニトロ化されたシトクロムcを加水分解し修飾部位を検討したところ、Trp59およびTyr67を含むペプチド断片に変化が観察された。 3.無処理シトクロムcを添加した場合のカスパーゼ-3活性化能回復の可能性についての検討 パーオキシナイトライト処理神経膠芽腫細胞から細胞抽出液を調整しシトクロムcを添加してカスパーゼ-3活性化能が回復するかを検討したが、活性化は観察されなかった。
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