初年度となる今年度は文献レビューとヒアリングを通じて調査枠組みを検討し、調査を実施した。 (1)文献レビュー:公衆衛生学、健康教育、社会学、環境心理学領域における地域環境と健康に関する国内外の研究をレビューし、健康に影響する環境要因を把握した。地域に在住する高齢者、とりわけ後期高齢者を対象とした研究は少なく、健康の指標については、社会的健康に着目したものが少なかった。他方、健康度の低下にともない環境影響が増大する可能性が指摘されているものの実証的検討を加えた研究は稀少であった。 (2)対象地域の選定:各種統計資料から、高齢者の保健福祉ニードが高く、かつ健康を支える資源のひとつである経済力が乏しい者の割合が高い大都市地域から一自治体を選定した。 (3)ヒアリング:行政保健婦および高齢者福祉担当者、民生委員、高齢住民へのヒアリングを通じて、具体的な保健福祉ニードおよびそれを支える資源の整備状況について把握した。当該地域は都市再開発の進むなか、近年住民同士のつながりが弱体化し、孤立する高齢者が増加した可能性、狭隘な住居環境により在宅介護が困難、外出が困難であることが問題視されていた。さらに以上の特徴について同じサービス提供主体をもつ自治体内におおいても地区格差がある可能性が挙げられた。 (4)調査枠組みの検討:後期高齢者の社会的健康度とそれを支える環境的要因については、高齢者調査、既存統計、および住民への意識調査に基づき把握することとした。高齢者調査では、社会的・身体的・精神的健康度、住居環境、家族環境、近隣環境その他基本属性を、既存統計では地域の社会人口学的特性および高齢者の外出先となりやすい施設数などを、住民への意識調査では、高齢者へ支援意識・行動などを設定した。 (5)高齢者調査の実施:調査は2001年7〜8月、無作為抽出によって選定された75歳以上の男女1000人を対象に訪問面接法により実施した。有効回収率は61.8%であった。
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