研究概要 |
漢方,鍼,マッサージ,薬草その他の民間療法など,医療機関で通常的に現代医療として認められて行われている以外の治療法を総称して,補完代替医学または相補代替医療(complementary and alternative medicine,以下CAM)と呼ぶ。英米豪では国民のCAM利用率に関する全国調査が行われているが,日本においては未だ全国調査データがない。そこで現在最も信頼度が高いとされるRandom Digit Dialing法(以下RDD法)を用いた電話調査によって,CAMの利用率および支出額を明らかにする調査を行った。 調査は2001年,電話調査会社に委託して行われた。1000名の日本人男女を,年齢,性別,地域差がないように層別化し,RDD法によって無作為に抽出して質問調査を行った。質問内容は,過去12ヶ月の間に何らかのCAMを用いたかどうか,具体的にどのようなCAM治療法を行ったか,どのような症状に対して用いたか,なぜCAMを利用するのか,医師にCAMを利用していることを告げたか,1年間にCAMに対して支出した額は幾らか,などである。 過去12ヶ月の間に何らかのCAM治療法(栄養ドリンク,鍼,漢方薬,サプリメント,マッサージなど)を行った人は76%にものぼり,この数値は米国医学界に衝撃を与えた42%(Eisenbergら,JAMA1998;280:1569-1575)を遥かに上回っている。しかし米国と違って,国民がCAMに支出した自己負担額は現代西洋医学の治療に対する自己負担額よりも少なく,約半分であった。これは両国の保険医療システムの違いが大きな理由の一つであると思われた。今回の結果から,有害なCAM治療法の規制,有効なCAMの選択,CAMを利用した際の医療経済効果の検証など,CAMの研究および政策を推進する必要があることが示唆された。詳細なデータ解析は現在進行中である。当初の計画どおり,平成14年度に調査の妥当性のチェックを行ったのち,論文として研究発表する予定である。
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