エネルギー消費が大きい中枢では、クレアチンが血中濃度と比較し180倍も多く存在し、中枢神経活動に重要な役割を果たしていると考えられていることから、我々は「血液脳関門が積極的にクレアチンを血液から脳内へ供給している」という仮説を構築し、証明することを計画した。動物実験によって、尾静脈から投与したクレアチンが、血液脳関門を介して脳内に濃縮的に取り込まれることが明らかとした。その濃縮率は、内在性のクレアチンと同程度であり、血液脳関門が脳内に高濃度のクレアチンを供給する能力を有していることが示された。血液脳関門を構成する脳毛細血管内皮細胞の条件的不死化細胞株を用いて解析した結果、この輸送系には、クレアチントランスポーター(CRT)が関与していることが示された。そこで、マウスCRTに対する抗体を調製し、マウス脳切片を免疫染色をした結果、CRTは脳毛細血管においてもっとも強く検出された。以上の結果は、血液脳関門上にCRTが発現し、能動的にクレアチンを循環血液から脳内に供給しているという機構を示している。さらに、クレアチンと同様に神経保護作用を発揮するタウリンの輸送単体の発現制御に関しても解析を行った。条件的不死化ラット脳毛細血管内皮細胞を用いて解析した結果、タウリントランスポーターの発言は、TNF-αおよび高浸透圧によって誘導され、高濃度のタウリンでは抑制されることを明らかにした。この結果は、脳関門のタウリン輸送系は脳関門周囲の環境変化に応じてその発言が制御されていることを示唆している。これらの結果は、脳関門の新たな輸送とその制御機構を明らかにしたものである。
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