【目的】我々はCYP2D6 duplication allele(X2)として^*1X2、^*2X2に加え、^*10においても^*10X2となる遺伝子変異が日本人に存在することを報告した。CYP2D6^*1X2、^*2X2遺伝子変異は薬物代謝能を上昇させることが知られているが、^*10X2についてのそれは確認されていない。そこで我々は日本人におけるCYP2D6^*1X2、^*2X2および^*10X2の頻度を解析するとともに、それらの薬物代謝能に及ぼす影響について検討を行った。 【方法】日本人健常成人162名を対象にLong-PCR法およびXbaI、EcoRIハプロタイプ解析を行いCYP2D6X2を検出した。CYP2D6X2のゲノタイピングはLong-PCR法、およびC100T、G4180Cの点突然変異をPCR-RFLP法により解析することによって行った。フェノタイピングは162名のうちCYP2D6X2を含む41名を対象にdextromethorphan(DM)30mgを単回経口投与後8時間の蓄尿を行い、尿中DM、およびその代謝物であるdextrorphan(DX)をHPLC-蛍光法により定量することによって行った。Log_<10>DM/DXを算出し、ゲノタイプごとの薬物代謝能を比較した。 【結果・考察】日本人162名におけるCYP2D6^*1X2、^*2X2、および^*10X2の頻度はそれぞれ0.3%、0.3%、0.6%であった。DMによるフェノタイピングの結果、CYP2D6^*1X2もしくは^*2X2を有するヒトの薬物代謝能は、extensive metabolizerと比較して上昇する傾向が認められた。一方CYP2D6^*10/^*10X2を有するヒトの薬物代謝能は、intermediate metabolizerである^*10/^*10を有するヒトのそれと同程度であり、薬物代謝能の上昇は認められなかった。
|