PTH/PTHrPをはじめとしたペプチドホルモンの骨芽細胞に対する作用発現には、細胞内cAMPの上昇が重要な機構である。上昇したcAMPは古典的なPKAを活性化することが知られるが、近年同定されたEpac(cAMP-GEF)もcAMPの作用標的であることが示された。EpacはRap1を特異的に活性化し、Raf-1の活性を抑制する一方、B-Rafを活性化することから、cAMPによるMAPKカスケードに対する正負の両制御機構が存在し、PKAと独立した細胞内シグナルを調節する。本研究ではまず、骨形成担当細胞クローンにおけるEpac1、Epac2、Rap1、B-Rafの発現を調べ、cDNA導入による多面的解析の一環として、細胞増殖の調節の観点から解析を試みた。 検討の結果、EPacs、Rap1の発現はほぼ普遍的にどの細胞でも観察されたが、B-Rafのalternative splicingによって産生する97kDaアイソフォームの発現は細胞種特異的であった。cAMPによるERK活性化および細胞増殖促進作用は、97kDa B-Rafの発現と相関し、Rap1依存的であった。一方、B-Raf欠失細胞ではcAMPによるERK活性化は観察されず、細胞増殖抑制作用が見られた。本細胞の1つMG63にB-Raf cDNA導入によるリカバリー解析から、cAMPによるERK活性化および細胞増殖促進作用が見られた。以上のことから、骨形成担当細胞に対するcAMPの細胞増殖・抑制作用のチェックポイントは97kDa B-Rafであることを見いだした。 本成績は、13年度に予定した研究計画をほぼ達成したものであり、現在研究成果をJournal of Biological Chemistry誌に投稿し、minor reviseの段階である。
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