関節リウマチの治療薬として用いられる免疫調節薬の作用機序については不明な部分が多い。そのため、有害な副作用の発現は予測不可能である他、期待される効果の発現についても予測不可能である。一方、既存の免疫調節薬には未知の薬効・適応病態が潜在している可能性がある。当研究テーマのもとにすすめられたこれまでの研究成果より、免疫調節薬には免疫調節細胞であるT細胞に直接作用し、T細胞の遊走能・サイトカイン産生を抑制する、CD29などの接着因子・共刺激分子の発現を抑制するなどの現象が明らかとなってきた。 これらの結果を踏まえ、以下の2点について検証を進めてきた。 1)これまでに、患者由来T細胞を用いた細胞遊走能定量システム及びFACS法によるCD29発現定量系を開発した。これを用い、免疫調節薬によるT細胞遊走の抑制、CD29発現抑制に個体差が存在し、それが薬剤感受性を反映しうるか検討した。これまでに、免疫調節薬の薬効に個体差は認められたが、患者由来T細胞は現在治療薬による機能修飾をすでにうけている可能性があるため検討対象免疫調節薬の感受性を直接定量することは困難であった。一方、健常人由来T細胞の遊走能、CD29発現に個体差が認められたことから、本研究において開発されたアッセイ系の適応としては、個体間の比較ではなく、同一個体での経時的検討に適したものと推定された。 2)関節リウマチ以外の炎症性疾患症例由来T細胞を用いたアッセイにおいて検討対象とした免疫調節薬(抗リウマチ薬)が細胞遊走能抑制、CD29発現抑制を示し、薬剤適応病態の拡大の可能性が示唆された。
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