研究概要 |
検診が普及した今日,慢性骨髄性白血病(CML)や骨髄異形成症候群(MDS)といった無症状かつ緩徐に発症する造血器腫瘍のスクリーニングも比較的容易になったが,早期に異常を検出しても,診断確定のための骨髄穿刺は少なからず患者に疼痛を与えるため,その時点で骨髄穿刺まで試行されないケースは多い.一方,白血病に代表される造血器腫瘍の染色体分析は,診断・治療の選択に不可欠であり,予後との関連の解明も進んでいるが,一般に普及している手法は骨髄液を利用するため,やはり骨髄穿刺が決め手になる.これまで,FACSを用いてソーティングした血球にFISHすることで,骨髄幹細胞レベルから染色体異常の由来細胞を同定してきた.MDSや,CMLなどの幹細胞疾患では,末梢血の好中球で十分評価に耐えることがわかった.今回,室温で保管された過去の塗抹標本でのFISHを,比較的容易に可能にする手法を拾得したため,診断時以前の末梢血塗抹標本に応用した.慢性骨髄性白血病症例で発症した患者2例において,過去の塗抹標本との対比ができ,いずれも末梢血の白血球増多が軽度の時期にもbcr-ablの異常は好中球の中に高率に認められ,末梢血好中球ののBCR-ABLをFISHで検討する事は早期にCMLの可能性をスクリーニングできるものと期待された.また,急性白血病に移行した2例では軽度の末梢血異常の時期に既に,末梢血好中球は同様の染色体異常を持っており,骨髄異形成症候群の時期を経た白血病と考えられた.しかし,初期の段階で,遺伝子異常の種類を予測しにくいため,骨髄穿刺のタイミングが重要と思われた.骨髄腫では約30%でRb遺伝子の欠失を認め,予後不良が知られるが,RB欠失のMM1例でMGUSの時期の骨髄塗抹標本で既にRBの欠失を証明し得た.MGUSの時期のRB欠失は疾患の進行予測に有用である可能性が示唆された.
|