研究概要 |
検体材料より分離されたMRSAが感染症の起因菌であるか常在菌(保菌)であるかを迅速に鑑別する方法(鑑別診断法)を開発することを目的として,黄色ブドウ球菌が産生する酵素の産生量が対数増殖期と静止期で異なるという性質を応用した研究を実施している.本研究では,プロテインAとDNaseを研究の対象とした. 1.プロテインAおよびDNaseを定量するための酵素免疫測定系の構築 黄色ブドウ球菌が産生するプロテインAおよびDNaseを定量するために,二抗体サンドイッチ法による酵素免疫測定系を構築した.より高感度な測定が可能となるよう種々の条件を検討し改良を重ねた結果,プロテインAにおいては0.5〜50ng/ml,DNaseにおいては0.1〜1,000ng/mlの範囲で測定が可能な酵素免疫測定系を構築した. 2.培養上清中に分泌された酵素の定量 臨床分離株5株とStaphylococcus aureus NCTC8325株をハートインフュージョン培地を用いて液体培養し,我々が先に構築した酵素免疫測定系を用いて,培養上清中のプロテインAおよびDNaseの濃度を測定した.その結果,プロテインAは対数増殖期で分泌量が亢進するのに対して,DNaseは静止期で分泌量が亢進することが示された.黄色ブドウ球菌が産生する酵素や外毒素などの種々の分泌タンパク質は,agr系(a global regulatory system)により発現が制御されているために,分泌タンパク質の種類によって対数増殖期と静止期で発現量が異なることが知られている.我々の構築した酵素免疫測定系を利用して経時的に定量を行った結果は,このことに合致するものであった.
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