各種検査法を組み合わせ、最も効率が良く実用的な同定法として下記の方法を確立した。 異常ヘモグロビン症の同定 【第一段階】スクリーニングテストとして、(1)intact globinを用いてエレクトロスプレー質量分析(ESI/MS)による変異鎖の検出、(2)溶血液を用いて弱陽イオン交換高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による変異成分の検出を行う。(1)、(2)ともに陰性の検体については、その他の血液検査データを検討して異常ヘモグロビンではないと判定する。 【第二段階】(1)で10Da以上の質量数差のある変異成分を認めた場合;グロビンをトリプシン消化し、mixtureのままon-line HPLC/ESI/MSおよびMS/MS分析し、変異部位およびアミノ酸を同定する。 【第三段階】(1)で10Da以上の質量数葦のある変異成分を認めなかった又は第二段階で変異ペプチドを検出しなかった場合;溶血液を用いて等電点電気泳動またはHPLCにて変異成分を分取し、A)トリプシン、B)エンドペプチダーゼGlu-CとAsp-Nでそれぞれ酵素消化する。on-line HPLC/ESI/MS分析し、正常成分をモニターして変異ペプチドを検出し、MS/MS分析により変異部位をおよびアミノ酸を同定する。 上記方法にて学内外より依頼のあった異常ヘモグロビン症疑いの36検体を分析した結果、異常ヘモグロビン21種25症例、βサラセミア1種1症例の変異を同定した。その内、Hb Tatras(α7 K→N)、Hb Shaare Zedek(α56 K→E)、Hb Montfermeil(β130 Y→C)、Hb Cochin-Port Royal(β146 H→R)は、本邦第一例であった。
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