H大学医療技術短期大学部看護学科を卒業した993名を対象に、平成13年に行った調査について、さらに分析を加えた。質問内容は、個人データ、勤務状況、医療短大卒業後の経歴、看護職の志望、卒後教育と自己啓発、職業の継続、現在の看護実践レベル、職務満足度、職業や勤務している施設に対する考え、職業キャリア成熟尺度、人生キャリア成熟尺度である。回答者数は345名、回収率は36.0%であった。なお、男性と女性では職業に対する考え方が異なると予測されるため、尺度等の分析は、男性を除いて行った。 卒後年数を重ねることで、高まっているものは、看護実践レベルの知識や技術に関わる部分と自己の専門性に対する職務満足度であった。職業キャリアや人生キャリアは、経験を重ねることだけでは成熟していかない。成熟していくための要因は、様々あると考えられるが、看護に愛着を持つことは、そのうちの一つであった。また、看護する態度は、経験年数に左右されず、さらに、看護に愛着を持っていてもいなくても、それは看護実践レベルには反映されない。つまり、仕事を仕事として、業務と割り切ってこなしている可能性が推察された。 これらの結果ふまえ、質問紙調査時に、了解が得られた108名に、再び意志を確認し、了解が得られた43名に面接調査を行った。面接調査では、質問紙調査の結果を裏付けるデータも多く収集されたが、質問紙調査ではとらえきれていなかった家族や家庭などが、職業意識に深く関わっていることが浮き彫りとなった。 本研究により、いくつかの点が明らかになったが、横断的研究のため、単純に卒後年数による差であるのか、その卒業生の年代の特色による差なのかが、判断できない等の問題点もあった。今後は、本研究の結果をふまえ、さらに、質問紙調査、面接調査を行っていきたい。
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