研究概要 |
本研究では、看護記録に記載される看護情報のうち、色表現は多彩で個別性のある表現が多く共通理解されにくいことから、どのような思考過程で表現されるのかに注目した。まず、色表現にいたるまでの思考選程を分析し、さらに看護師の色の認知に調するアセスメント能力の形成選程を分析することを目的とした。 調査対象は、関東・東梅・甲信越の6つの総合病院に勤務している常勤看護師のうち、研究協力に同意した61名とした。対象者の臨床経験年数は1〜24年目(平均787±6.2年)、男性2名、女性59名であった。勤務病棟は外科系23名、内科系22名、産婦人科6名、救急救命系5名、手術室3名、小児科2名であった。調査は、7項目の質問紙調査と半構成式の面接調査を実施した。面接から逐語記録を作成し、色表現に至る思考過程の違いが表現されていると判新された文脈を抽出し、内容分析を用いて整理・分類した。 色を用いて患者情報を表現する機会がよくあると全ての対象者が認識していた。今回の調査では、同じ色を見て条件を変え、3回表現をしてもらった。その結果、3回すべて同じ表現をした人は3名のみであり、すべて違う表現をした人が75.4%と圧倒的に多かった。色表現用語と臨床経験年数には関係が無かった。色表現の共通理解に対する認識は、「共通理解している」が27.9%、「多少の誤差があっても共通理解している」が18.0%、「よく表現するものに関してのみ」が6.6%、「経験年数を重ねれば」が4.9%、「共通理解していない」が42.6%という結果が得られた。勤務病棟による特徴的な色表現用語がみられ、看護師の色の共通理解に関する認識からも、同じ病棟であれば色表現用語が共通理解できていることが示唆された。 看護師が視覚データを捉えてから色表現に至るまでには「対象物の認識」「観察の経験」「情報との比較」「色表現の選択」「色表現」の5段階の思考選程を通過していた。さらに5段階を通過するパターンを分類すると、7つの思考パターンがあった。パターン分類からみると、色を表現する時には色を捉えるだけでなく、異常かどうかのアセスメントをしなが,ら意識して対象物全体を捉えようとする看護師が多い。このことから、色表現は重要なアセスメントが含まれている情報であるといえる。
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