介護保険制度下における居宅介護サービスの質を評価し、今後の居宅介護サービス利用者支援の方向性について示唆を得ることを最終目的に、【研究1】【研究2】を実施した。 【研究1】介護保険制度の居宅サービス利用者と介護者の主観に基づくサービス導入の効果に焦点をあてながら、居宅介護サービスの質を評価する項目を抽出することを目的に、訪問面接による聞き取り調査を実施した。その結果、利用者に関する評価項目として、(1)身体機能の改善、(2)健康状態の改善、(3)身体の清潔状態の保持、(4)人とのよい人間関係、(5)心理面のポジティブな変化、(6)生活障害の改善、(7)自己決定、(8)継続性の8項目が、主介護者に関する評価項目として、(1)身体的負担の軽減、(2)心理的安寧感、(3)サービスに対する肯定的な気持ち、(4)他人との交流、(5)時間の自由裁量の5項目が抽出された。また、サービス導入の効果の他、サービスが提供される過程や、利用者の周りの支援体制について、利用者側から見た評価の視点が明らかになった。 【研究2】抽出された評価項目ならびに評価の視点に基づき作成した質問票を用いて、小規模町村であるA町の居宅介護サービス利用者とその主介護者を対象に、留め置き法による調査を実施した。その結果、(1)サービスの量・種類の整備、(2)外出支援・食・リハビリテーションのニーズ、(3)介護者支援、(4)サービスに携わるスタッフの資質、(5)地域ケアサービス体制づくりへの理解と協調性における課題が明らかになった。A町のような小規模町村における行政の役割として、自治体主導による介護保険サービスの整備、地域特性や対象者のニーズに応じた保健福祉サービスの開発・充実、在宅介護支援センターと保健師の機能の活用、在宅ケアチーム作りへの主導的関与、サービスに携わるスタッフの研修・相談機能の強化と定期的なモニタリングの重要性が明かになった。
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