東大病院医療社会福祉部のターミナルケースへの退院支援について研究を実施した。今年度は、部の婦長に対するインタビュー調査や参加観察を行い、支援内容を記述した。以下にその内容を示す。 病棟スタッフ(主に医師)からの依頼を受け、まず、情報収集と患者・家族との面接を行う。病状については、自宅療養が可能かどうかをみるとともに、余命予測についても確認する。それにより支援の進め方の速さが違ってくるからである。また、在宅療養に心を決めたとはいえ、患者・家族は不安を持ち続けているので、必要に応じて何度でも面接を行い、自らの選択に自信がもてるよう支援する。 方針が決まると、関係機関との連絡・調整を行う。訪問医、訪問看護ステーションなどの選択にあたっては、在宅での看取りを含めた意向の確認が重要である。率直に患者の状況を説明し、できない場合に断りやすいような尋ね方をする。また、医療処置が必要な患者については、医師・看護婦ともケアに精通しているとともに、業者も含め密接に連携をとることが必要である。また、在宅で対応できない症状が生じて入院する場合に備え、患者宅から近い後方病院を探しておく。本人の事前受診が困難なので、家族に紹介状を持参させ、診療録を作成しておいてもらうようにする。 患者・家族には、退院前に連絡先の一覧を渡し、退院後はまず訪問医や訪問看護婦に相談するよう説明しているが、退院後も連絡が入ることが多い。病状に関する相談に対しては、助言を行ったり、病棟スタッフに連絡したりする。介護が長引いたり、想像以上に負担が重かったりする場合は、家族の疲労を軽減するため、一時入院等を検討する。サービスの調整や再入院が必要な場合は、医療者間の橋渡し役として機能しており、外来や病棟のスタッフが直接相談を受けるよりも効率的な対応ができている。 来年度は、患者の退院後の生活についてフォローアップ調査を行う予定である。
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