研究概要 |
本研究は事前調査で明らかにした「閉じこもり」現象の枠組みをもとに,在宅高齢者の閉じこもりの実態とその特性について検討し,施策化に向けての基礎資料とすることを目的とする。 調査対象は,1994年1〜12月の間に(1)65歳以上の配偶者と死別した65歳以上の高齢者及び(2)63歳以上の配偶者と婚姻状態にあった65歳以上の高齢者である。調査内容は,基本属性〔性別,年齢,厚生省障害老人の日常生活自立度判定(以下,自立度),痴呆性老人の日常生活自立度判定(以下,痴呆度)等〕,社会活動状況,移動能力,社会活動への意欲,生活機能,友人との交流等であり,保健婦有資格者が訪問面接を実施した。今年度はこれらのデータベースを作成した。分析対象は,(1)から死亡,拒否,転居,不在・不明,入院・入所中,痴呆度I〜IV,自立度ABCランクを除く206名(以下,死別者),(2)から死亡,拒否,転居,不在・不明,入院・入所中,痴呆度I〜IV,自立度ABCランク,配偶者死亡を除く143名(以下,有配偶者)とした。尚,本研究では行動範囲と活動意欲の2側面から「閉じこもり」「閉じこもりハイリスク」を操作的に定義した。 その結果,閉じこもり,閉じこもりハイリスクの各出現率は死別者群1.6%, 38.1%,有配偶者群1.5%, 42.4%であった。また,閉じこもり,閉じこもりハイリスクを"risk群",非閉じこもりを"non-risk群"とし,各分析対象別に各要因について2群で比較した。死別者群,有配偶者群ともにrisk群はnon-risk群に比べ,年齢が高い,社会活動が不活発,活動意欲が低い,生活機能が低い,主観的健康感が低い,家庭内役割がない,趣味・楽しみがない,友人との交流頻度が少ない等,特に心理・社会的な機能の低さが認められ,寝たきり・痴呆予備群として「閉じこもり」「閉じこもりハイリスク」高齢者に対する予防的支援の必要性が示唆された。
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